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BlogNoOkiba

感想文とか書きます

小説『貞子VS伽倻子』を読みました(ネタバレ有)

小説感想

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6月公開のホラー映画『貞子VS伽倻子』の小説版が映画に先立って発売されまして。読みました。

sadakovskayako.jp

映画観る前に読んじゃったらネタバレになっちゃって映画楽しめないかな? とか思って一瞬だけ読むのをためらったんですが、「映画本編と登場人物もストーリーも違う」という点と、そもそも劇場版『貞子VS伽倻子』は「白石晃士監督が手掛ける2大ホラーヒロインの異能バトル」という点で過剰に期待をしているので、万が一オチが同じとかでも見どころはそこじゃない。と思い、小説版を読みました。


7/12追記: 映画の感想のほうも書きました↓ shunozo.hatenablog.com


貞子VS伽椰子 (角川ホラー文庫)

貞子VS伽椰子 (角川ホラー文庫)

ネタバレを書く前に感想をヒトコト書いておくと、エイプリルフールの1発ネタを元ネタにちゃんとホラー小説やってたので、みんなも読もう。

以下ネタバレ込で感想

あらすじ

ホラー映画の主演を依頼された劇団員の恵子。しかし、監督が不審死、恵子は居合わせたフリーライター・小堺と共に、現場にあった「呪いのビデオ」を観てしまう。2人は貞子に呪い殺される前に、入れば伽椰子に捕まり二度と戻れなくなるという「呑む家」への侵入を決意。呪いの相殺を狙い、その顛末を映像に記録することに。撮影班が次々と姿を消していく中、ついに貞子と伽椰子が姿を現わし…。ホラーの歴史を変える最恐対決!
Amazon.jp - 『貞子VS伽椰子 (角川ホラー文庫) 黒 史郎』 より。

という感じで、劇場版のあらすじとは違い、

  • 呪いを浴びる主人公はフリーライターと劇団員(男女)
  • 劇場版(の予告にでてくる)子供霊能力者とバケモンにはバケモンぶつけんだよおじさんは出てこない。(というか登場人物は全員違う)
  • 主人公と一緒に伽倻子の家に突入する人達(映像撮影班)がアホみたいに多い、戦いは数だよ兄貴。

みたいな感じです。まだ劇場公開されてないんで不確定ですが呪いをぶつけ合うというコンセプト以外はほぼ別モノなのでは、と思います。

感想

読んだ感想ですが、ざっくり4パートくらいの物語構成になっていて

  1. 呪いに巻き込まれる街の住人パート
  2. 主人公行動パート
  3. 呑む家突入パート(プロレス前哨戦)
  4. プロレスパート

みたいな感じでした。(自分で勝手に構成切ってます)
1.では、伽倻子の呪いと貞子の呪いそれぞれどちらかにやられてしまう一般人のエピソードが書かれます。

ここだけ見ると怪異オムニバスみたいな感じですが、2.の行動パートでライターである小堺の取材によってそれぞれ別の事件が1つの怪異に集束していく…みたいな展開です。
別々の事件と言っても、呑む家(伽椰子の家)が存在してる街が異常に行方不明者が多くて、それをずっとオカルトライターな小堺が追ってるみたいな感じなんですが、この前半部分だけでも結構薄気味悪いホラーしてて、個人的には割と好きです。

「一見何の変哲もないけど、なんか薄気味悪い」街が舞台とか、劇場版不安の種とかもそんな感じだった気がします。あれも原作が怪異オムニバスですが、こっちはちゃんと怪異の正体が判明しているというか、超有名ですね。

ちなみに、個人的にこの序盤パートで一番怖かったのは呪いに巻き込まれたアニメオタクのおっさんの葬式シーンで、生前好きだったアニメソングが葬式でかけられる。という特に物語上意味は無いであろう描写がめちゃくちゃ怖い。
最近話題になった仏壇の横にエロゲの箱つまれる所業並の怖さがあります。
プロレスホラー作品を読み始めたのに別方向から恐怖をつきつけられました。

脱線しましたが、そんなこんな小堺が取材を進めて行くうちに、劇団員の恵子とエンカウントして、いろいろあって、2人が貞子の呪いを浴びます。
なんか強そうな霊能力者に会いに行くイベントも起きますが、「これヤバい、正攻法じゃ無理、帰って」みたいな感じで特に何も自体が進展せずに終わります。

女性霊能力者という点と「霊能力高すぎて呪われた人とエンカウントした結果因果が結ばれて巻き込まれる」みたいな感じで貞子の呪いにやられてた点が『コワすぎ!FILE01』の犬井本家を彷彿とさせましたが、本家は後々自分の命と引き換えに強力アイテムを生成してくれますがこっちに出てきた霊能力者はこの場面以降名前が2回出るくらいで特に登場しませんし何もしてくれません。

ただ、「普通にやっても呪い回避できない」ということを強力な霊能力者からヒアリングするという場面は物語上必須ですよね。普通に除霊できるなら怪異プロレスとか誰もやらねぇよって話です。

そんな感じで頼りにしようとしていた霊能力者からも見放され、手詰まりか…とはならずに、このあたりから斜め上の展開になります。
フリーライターの小堺が自身のコネをフル活用して人員を揃え、「貞子の呪いに立ち向かうドキュメンタリー」の撮影会議をはじめます。

そして企画会議の末に最終的に出た結論が「貞子の呪いと、伽椰子の呪いをぶつける」、普通にやってもダメという点から「じゃあ別で話題になってる呑まれる家の呪いも浴びればなんか起きるんじゃないか」というトンデモ発想、もちろんノンフィクション! これは売れるぞ〜!
ちなみに他にもボツになった企画案が箇条書きで登場しますが「ビデオをひたすら観続けて呪いの期限を先延ばしにしまくる」など、真面目なのかふざけてんのかよくわからない案が列挙されてて面白かったです。

そんな感じで世紀の映像を撮るための撮影チームが結成されるわけですが、この撮影チーム、

  • 夜は奴らの時間だから、朝になってから呑まれる家にいって明るいうちに準備を済ませる
  • 大人数で立ち向かう

という感じで、ホラー作品あるあるの「わざわざ夜に少人数で怪奇現象起こるところに行く」という伝統芸能的なフラグ立てをちゃんと回避してます。
すばらしいですね、呪いと呪いをぶつけるとかいう斜め上の結論を出した上で、それを実行するための道筋はちゃんと最適解で危なげなく進めようとする感じが「怪異に立ち向かう」感じが出ててとても好きです。まぁでもここでオチを言ってしまうと全滅ENDなんですが。

そして呑まれる家に到着した撮影チーム、「呑まれる家で貞子のビデオを観る」為にセッティングを始めるんですが、2人1組で行動するように心がけていたり、ちゃんと家の窓を全開けしてたりと、丁寧にクリアリングしてたりさすがという感じです。まあ全員(略

そんな感じで万全の体制を整えても、一人また一人と、そして途中からごっそりと家から撮影スタッフが消えていき、そんななかでも呪いのビデオを観始め、クライマックスの貞子対伽椰子戦です。

ここに至るまでは「主人公がどんどん追いつめられていく」感が出ててかなりホラーしてるんですが、クライマックスに進むに連れて登場人物もややぶっ壊れ気味に発狂し始めて、ギャグ要素が強くなってきます。

撮影クルーで最後まで生き残ったカメラマンの人なんて、暴れ狂う伽椰子の呪いを見ながら
「すげぇ! こいつを公開したら世間が湧くぞ! 血だらけの! 幽霊! 」
とか言い始めます(そしてやられます)

目の前の狂気に完全にメンタルがやられてますが、この言い草どっかで聞いたことあるなと思ったらアレですね、完全に『コワすぎ!』の工藤Dですね。
あの人も「実験だよ!実験!」とかいって怪異と呪具ぶつけてましたが、改めて工藤Dナチュラルに狂ってたんだなと別作品を見ることで感じました。もしかして撮影チームに足りなかったのは金属バットだったのでは。

主人公の一人である小堺も、途中で完全に心が折れる描写があった後、もはやどうでも良くなったのか 「いいぞ! 貞子! そこだ! いけ!」
とか普通にプロレス観戦しはじめた上に、
「貞子VS伽倻子だ!!」
と、突然のタイトル回収をしはじめます。ギャグじゃねーか。

そしてクライマックス、呪いは対消滅し、解決したかと思ったら…

ここまで文章読んでる人にオチのネタバレを気にする人は居ないと思うので書くと、

貞子と伽椰子が大喧嘩の末に意気投合して一つになります。

という感じで、やっぱりギャグじゃねーか! という感じな上に全滅エンドでしかもなんかスゲーヤバイもの作っちゃった(テヘッ)みたいなオチなんですけど、一応本編中で「都市伝説は語り継がれていくうちに融合したりする」という話が出てきてたりと、伏線的にはなってるみたいです。

というか、オチよりも、その前にニセ貞子*1が出てくるんですが、こいつ結局何だったんだよ感がすごくて、特に説明もされないまま終わるので、貞子と伽椰子の融合体よりこっちほうが意味不明で怖い。

エピローグも、現代社会における人間関係の希薄さと呪いの足音を絡めて後味悪く終わらせててほんのり怖い感じですが、いかんせん呪いの本体がプロレスの末に友情パワーでドッキングしてできた代物ということを知ってる読者視点からすると、「怖い」というより「ヤベぇ(笑)」みたいな感じです。
その感想を抱く原因は「そもそもホラーとして読む気が毛頭なかった」自分にある気がしますが。

*2

全体的な感想としては、「怪異に遭遇して、立ち向かって、でもバッドエンド」的な、わりと王道なホラーしてる感じでした。
特に前半なんかは最初に断片的に怪異オムバスを見せて、主人公(フリーライター)が後でそれを取材して掘り下げたり、点と点が線でつながったり…という感じのことをやっていて、貞子と伽椰子で一発ドーン!みたいなノリではなく、ちゃんとホラーモノとして構成されてて個人的には好きでした。

ただ、抜群に知名度がありすぎる貞子と伽椰子が怪異の正体なので、途中からは「得体の知れない怪異に襲われる」というより「近所で有名の異能キチガイに目をつけられる」感がすごかったです。

もともと貞子VS伽倻子というのがエイプリルフールネタというのもありますが、最近劇場版に向けて政見放送してたり、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」じゃないですが、「もうこいつらがホラー作品でなにやっても怖くないな…」という気持ちがかなりあります。

だからこそ劇場版には「2大ホラーヒロインの異能バトル、しかも白石監督プレゼンツ」というベクトルでワクワクしてるんですが、小説版はバトルシーンももちろん文字なんで、そのあたりはビジュアル面ないとやっぱり面白く無いなーという感じでした。

ただ、だからこそ物語の進行が王道ホラーをちゃんとやっていたので、普通に楽しく読めました。特に心霊スポット的なところに集団で押しかける感じの展開は先述したとおりホラーものあるあるの王道フラグをちゃんと立てないようにしているというか、現実的に立ち向かうとしたらその辺しっかりやるよねみたいな事やってて、「こういうの読みたかった!」感が個人的にありました。*3

という感じで、イマイチうまく感想がまとめきれてないですが、一番最初に書いたとおり、エイプリルフールの1発ネタでちゃんとホラーやってるので、個人的には普通におすすめできる作品でした。

映画も見よう

なんとアマゾンプライム会員になればAmazonビデオでメイキングや出演者インタビューを含む特別映像が観れる!

白石監督、「貞子と伽椰子のいい面を衝突させたい」とか語ってます、さすが白石くんや! これは売れるぞ〜!

そんな感じで、劇場版も見たら感想記事を書きたいです。
↓の本が劇場版のネタバレにも触れてるらしいので、観たら読みたいですね。

*1:序盤で行方不明になってた女子高生

*2:元ネタ

*3:似たような作品知ってたら教えてください